竹沢うるま「The Songlines」を読んで。

the songlines

写真家の竹沢うるまさんの旅行記「The soglines」を読んだ。

竹沢うるまさんは旅する写真家。最近、日経ナショナルジオグラフィック写真賞のグランプリを受賞した新進気鋭の風景写真家です。

この辺の話は茅ヶ崎の竹沢うるまさんの写真展に行った際の紹介に書いたので下記のエントリーをどうぞ。

旅写真家・竹沢うるま写真展「Trance Continent」を見てきた。 – 広く浅くときどき深く

読んだ感想ですが、間違いなくこれは素晴らしい本です。

今まで旅人のバイブルと呼ばれる深夜特急から始まりいろいろな旅行記を読んできましたが、その中でもこの本はトップクラスでした。

久しぶりに僕の理想の旅に近いような旅行記を読み、恥ずかしながらも嫉妬すら覚えました。

まるでジェットコースターのようにスラスラと読めてしまいます。久しぶりに読み終わりたくないという気分を味わった本です。

そんなThe Songlinesについて僭越ながら感想をこのブログに書きたいと思います。

ちなみにソングラインとはオーストラリアの先住民のアボリジニが歌う「歌の道」のことです。
彼らは母なる大地を歌として捉え、歌を頼りに何ヶ月も旅を続けるのだそうです。かっこいい。

旅は、重い

The songlines 竹沢うるま

この本を読んで、率直にいいなと思えたのは旅の重さを感じたから。

著者は作中での旅の出来事に関してそれなりに淡白に記述していますが、一つ一つのエピソードをイメージするとどれも重いです。

南米でのアマゾン川下りとアヤワスカによるシャーマンの儀式。アフリカでの未開の部族とのやり取り(彼らの多くは地図も知らない、お金も薬も病院も存在しない)。東チベットでの交流。などなど

想像してみてください。

これらの場所には日本のように交通網も整備されていないし、ご飯もあまり美味しくないかもしれない、トイレやシャワーだってない。

重いんですよ、旅は。

そんな旅に著者は正面から向き合って無事に帰国した。そして旅で感じたことをこの本に凝縮して書き上げてくれた。感動しました。

僕は最近の世間の旅することへの軽さというか、そういった風潮に違和感を覚えます。

最近、大学生のサークルのような旅団体が多いように感じるのです(多分、実際そう)
そういった団体はあえて誤解を招くような言い方をすれば旅をしたいというよりもただ騒ぎたいような参加者が多いように感じます。

旅をしたことがないから最初は誰かと一緒にバックパッカー旅を経験したいとかならまだわかるのですが、僕はできることなら最初から一人旅した方がいいと思う派です。

というか、旅仲間を日本で作って一緒に旅行するって、もはやツアーでいいじゃないですか。

旅人にはストイックに旅してほしいのです。僕も今までもそうしてきたし、今後もそうあるだろうと思います。(旅人はそうあるべきだと思っているので)

僕が大学生からバックパック担いで一人旅を初めて早7年、旅に出続けて感じたことは旅って決して楽しいだけではないということでした。

一人で言葉が通じない国を何日も旅すれば孤独を感じます。

辛いことを言われたり、理不尽に怒られたり、所持品を盗られれば傷つき、へこみます。

長距離移動が連続したり、過酷な環境でなかなか宿が見つからなければ嫌になります。

でも、そういった時間が振り返ればかけがえのない愛おしいものだと感じます。自分の深い部分を見つめ直すいいきっかけになります。

そんななかでも、旅先ではそれ以上に圧倒的に現地の人の暖かさや、いろんなバックグラウンドを持った旅人との交流。そしてどうしても行きたかった目的地に感動するんです。

この本を読んで、久々にそういった気持ちが思い出せました。

この本でさらに旅の奥深さを知った。

竹沢うるま 写真展

この本の中でうるまさんは苦しみながらも、前に前に旅を進めていきます。

旅先も一般的なライトな場所ではなくて、アマゾンでのアヤワスカでのシャーマンの神秘的な儀式やアフリカ遊牧民のボロロやドゴンカントリーでの日々、そして東チベットなどなかなか聞き慣れない場所も散見した。

ちなみにアヤワスカとはアマゾン川流域に自生する蔓の一種です。

初めて聞く場所や民族を知ったおかげで、私自身の今までの旅を振り返ることもできたし、今後行ってみたいと強く思う場所も増えました。

最近は絶景系の本が人気だが、うるまさんの旅行記では写真家なのにどの章も人々に焦点が当たっていたのも印象的。

それが死生観や生きることに繋がっているのだと思う。そして旅は出会いという言葉に集約されているのだと思う。

また、本の中で紹介された茨木のり子さんの詩集の「自分の感受性くらい」と題された詩にも感動した。
(詩の内容は本を読んでみてください)

旅の奥深さをこの本でかいま見れたことが嬉しいです。

旅することで見出した生きる意味。

竹沢うるま ソングライン サイン入り

ちなみに僕が手に入れた本はうるまさんの写真展を観に行った際に購入したサイン入り本でもある。

そのうちプレミアがつくと嬉しい笑

この本を読んで、正直こんな旅ができていることが羨ましいし嫉妬しました。

日頃から旅するように生きていきたいと願っているけれど、この人はそれを体現したんだな、そう感じました。

死についてちゃんと向き合っていることも良かった。

その辺りは以前に荒野へを読んだときにも感じたことと似ています。

【考察】映画「イントゥ・ザ・ワイルド」の原作の「荒野へ」を読んでみた。 – 広く浅くときどき深く

最後のあとがきに記された詩は旅ロック夫妻に捧げた詩でしょう。

同時代を旅したからこそ、旅の途中で倒れた旅ロック夫妻に共感しこのような文章が書けたのだと思う。

この詩を読んだとき、まるでAcross the Universeを聴いているような感覚に陥った。
(しかもアンソロジー収録バージョン)

一カメラマンでここまで文章がうまいとは恐れ入った。

これはThe Songlinesと対となる写真集であるWalkaboutも購入するしかない。